*フォーレ 組曲「マスクとベルガマスク」作品112(2013年2月11日 第31回定期演奏会プログラムより)

 ガブリエル・フォーレ(1845−1924)は、フランス南部、ピレネー山脈のふもとのパミエで、小学校教師であった父と地方貴族出身の母との間に生まれました。音楽家の家系ではありませんでしたが、ピアノの天分が注目され、9歳でパリのニデルメイエール古典宗教音楽学校の寄宿生となります。ここで後に同校のピアノ科教授となったサン=サーンスと出会います。1875年から既にフォーレはフランス音楽を代表する人物の一人としてその道を歩んでいますが、サン=サーンスはそのことを喜び、助力しています。
 1918年9月、当時74歳だったフォーレは、モナコ皇太子アルベール1世から「マスクとベルガマスク」と題する1幕の舞踏付き劇作品の音楽を依頼されました。ヴェルレーヌの詩集「艶なる宴」にこんな一節があります。「君の心は洗練された風景画のようだ。その中で、人々は魅惑的な仮面(マスク)とベルガモ(イタリア北部の町)風の奇抜な衣装(ベルガマスク)をまとい、リュートを弾き、踊りながら歩いている。けれど、その仮面の下には悲しげな表情が隠されている」。それをもとに作られた台本は、次のようなあらすじでした。喜劇役者のアルルカンやコロンビーナたちが休日に舞台装置を使って遊んでいると、観客たちがやってきます。そしてふだんは目立たない彼らの方が劇を演じ、役者たちを楽しませます。
 フォーレは依頼された8つの楽曲の大部分に、23歳から59歳までの間に書いた作品を転用しています。選ばれた作品は「艶なる宴」の雰囲気にぴったり合うものでした。さらにフォーレは、8つの楽曲のうち、第1曲「序曲」、第5曲「メヌエット」、第7曲「ガヴォット」および第2曲「パストラール」の4曲を管弦楽用組曲にしました。
 フォーレはこの組曲について、妻への手紙に率直に書いています。「私はここで小さな『序曲』と舞曲を作曲、管弦楽化しましたが、楽しい仕事でした……。レナルド・アーンは、この作品はまるでフォーレを真似たモーツァルトのもののようだ、と言いました」。その「序曲」には、まったくモーツァルト風な軽快さと、怒りを伴った激しい興奮が見出されます。さらにモーツァルトの「ドイツ舞曲」とフランス古典派の様式を兼ね備えた、優雅なリズムに基づく「メヌエット」と、温厚で楽しげな「ガヴォット」がそれに続きます。この組曲において真に重要である終曲の「パストラール」は、フォーレの晩年の作品に現れる超自然的な輝きがみられる作品です。また、終曲の終盤で「序曲」の冒頭主題を再び呼び戻すことによって、組曲全体を巧みに結び付けています。

(フルート 園田 弘世)

編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 2、トランペット 2、ティンパニ 1、ハープ 1、弦楽5部。

 

 


 

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