*ハイドン 交響曲第103番 変ホ長調「太鼓連打」 (2016年9月11日 第37回定期演奏会プログラムより)

 ロンドン交響曲の 1 曲であるフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732−1809)の「太鼓連打」。 当時、音楽興行主とて活動していたヨハン・ペーター・ザロモンの招きにより、ハイドンは 1791 年から1792 年までと、1794 年から1795 年までの 2 度にわたり、ロンドンを訪れてお り、その期間に交響曲第 93 番から第 104 番までの 12 曲の交響曲を作曲している。これら は総称してロンドン交響曲またはザロモン交響曲と呼ばれており、本日はその中の 1 曲である 交響曲第 103 番の「太鼓連打」を演奏します。
 ハイドンが 63 歳の時の作品である「太鼓連打」は、日本語の感覚からすると、太鼓がさ ぞかし活躍する曲をイメージされる方も多いかもしれない。ところが実際には、第 1 楽章の 冒頭でティンパニの静かなロール(音が続いて聞こえるように連続して叩くこと)から曲が始 まるため「太鼓連打」と呼ばれているのであり、想像されるような騒がしい曲ではないことを事前にお伝えしておこう。 英語名では「ドラム・ロール」といい、そちらの方が曲のイメージに合っているのではなかろうか。曲自体は古典的 交響曲の形式に基づいた構成となっており、ハイドンらしい明るさや優雅でセンスのあるメロディが随所にちりばめら れた名曲である。
第1楽章 冒頭はティンパニのロールから始まり、その後、低弦とファゴットによる陰鬱な旋律が続く。アレグロ部に 入るとハイドンらしい軽快な主題が演奏され、曲は華やかさを増しながら再びティンパニによる冒頭部が再現され、 そのままアダージョからアレグロに移行し曲を閉じる。
第2楽章 ハ短調から始まる曲だが、途中、短調と長調の変奏が交互に繰り返される。中間部では交響曲であるこ とを忘れさせるようなソロ・ヴァイオリンによる優雅な旋律が演奏され、室内楽の雰囲気を漂わせながらも、再び交 響曲の構成に戻る。終盤ではなんとも切なく美しいメロディが流れるなど、様々な要素が含まれた楽章となっている。 ちなみに、初演の際はこの第2楽章がもっとも聴衆に人気があったとのことで、アンコールではこの楽章が演奏され たという。
第3楽章 典型的なメヌエットとトリオの形式である。ハイドンならではの風格漂う気品のあるメヌエットである。
第4楽章 冒頭、ホルンの軽快な響きから、弦楽器のささやくような旋律に、様々なセクションの音楽が重なり、まさに円熟したハイドンならではの華々しくも素晴らしい音楽が展開される。冒頭で太鼓がさも活躍しないようなことを 書いたが、実はこの第4楽章、ティンパニはまさしく様々な箇所で連打があり、輝かしいフィナーレに向けて一気に駆 け抜けるさまは、まさしく太鼓連打なのかもしれない。

(打楽器 尾畑 圭一)

編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 2、トランペット 2、ティンパニ 1、弦楽5部。

 

 


 

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