*ドヴォルザーク  序曲「自然の中で」 作品91 (2017年2月19日 第38回定期演奏会プログラムより)

 ドヴォルザーク(1841-1904)は、チェコを代表する作曲家です。美しくて親しみやすい数々の名旋律で知られ、あのブラームス(1833-1897)を羨ましがらせたほどのメロディーメーカーでもありました。プラハの近郊、モルダウ川沿いの農村の肉屋兼居酒屋に生まれたドヴォルザークは、大の音楽好きで民族楽器チターの名手でもあった父のもと、幼い頃からチェコの民謡に親しみます。8人兄弟の長男として、家業を継ぐべく近くの町の肉屋に奉公に出されますが、音楽の才能を認められ、16歳でプラハのオルガン学校に進学しました。卒業後は、小さな楽団のヴィオラ奏者としてなんとか生計を立て、作曲家として花開くのは30代半ばの頃、オーストリア国家奨学金の審査員であった8歳上のブラームスの目に止まり、世界的な作曲家への道が拓けたのです。
 よき夫、よき父、また、よき指導者でもあり(弟子には同じくチェコの音楽家スークやノヴァークがいます)、音楽にもどことなく温かな人柄が感じられます。国際的な名声を得た後も、素朴な生活スタイルは変わらず、夏になると、プラハから60キロほど離れた緑豊かな村の小さな別荘にこもり、飼っていた鳩を愛でながら、まさに自然の中で作曲にいそしみました。
 今回ご紹介する「自然の中で」は、ニューヨークの音楽院に招聘されて渡米する前年、1891年の春から夏にかけての作品です。「自然と人生と愛」を題材とする演奏会用序曲三部作の中の一曲として構想されました。「自然の中で」はその名の通り自然讃歌を、またそれに続く「謝肉祭」は人生を、「オテロ」は愛をテーマとしています。
 冒頭、ファゴットとヴィオラによるヘ長調の第一主題(自然のテーマ)に始まり、第1ヴァイオリンによるイ長調の第二主題に続きます。終盤にかけて、フルートを中心とする木管がコラール調のモチーフを歌うと、弱音器を付けた弦楽器がそれに続き、最後は自然に包まれた静寂な夏の夜を思わせるように、静かに終わります。

(ヴァイオリン 野崎 絢子)

編成:フルート 2、オーボエ 2、コールアングレ 1、クラリネット 2、バスクラリネット 1、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ 1、トライアングル 1、シンバル 1、弦楽5部。

 

 


 

このサイトはフレームで構成されております。画面左端にメニューが表示されない場合は、下記リンクよりTopページへお越しください。
ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/