*ベルリオーズ  序曲「ローマの謝肉祭」 (2018年2月4日 第40回定期演奏会プログラムより)

 シェイクスピア女優ハリエット・スミスソンとの失恋を音楽に昇華させた傑作、幻想交響曲で大成功を収めたベルリオーズ(1803−1869)は、その3年後、めでたく彼女と結婚します。ところが蜜月は長く続かず、二人は別居状態におちいります。そんな時期に書かれたのが歌劇「ベンヴェヌート・チェッリーニ」でした。イタリア・ルネサンスの天才彫刻家チェッリーニの、恋と波乱の人生を描いた意欲的なオペラです。
 16世紀、ローマの謝肉祭の日。教皇からペルセウス像の制作を依頼されてフィレンツェからやってきたベンヴェヌートは、父親の教皇財務官に結婚を反対されている恋人テレーザと駆け落ちを図ります。紆余曲折ののちに二人は結ばれるというお話なのですが、パリ・オペラ座での公演はわずか4回で打ち切られ、初演は大失敗に終わりました。台本がよくなかったのだという見方に対して、ベルリオーズは反論しています。「わたしはこの脚本が気に入っていた。この作品が毎日上演されるほかのオペラに比べてどこが劣っているのか、どうしてもわからない」。おそらくベルリオーズの音楽が、当時の観客にとって、新しすぎたためなのでしょう。このオペラの第2幕への序曲として書かれたのが、きょうお聴きいただく「ローマの謝肉祭」です。のちに独立した管弦楽曲として発表されると、こちらは大好評を博しました。
 南イタリアの陽気な民族舞曲サルタレロの激しいリズムに乗った華やかな序奏が終わると、伸びやかな甘い旋律をコールアングレが奏で、それをヴィオラが受け継ぎます。オペラの中で、ベンヴェヌートとテレーザが「ぼくは幸せだ。きみを愛している」「あなたはなんて情熱的なの」と愛をかわす場面の音楽です。その後ふたたび現れるサルタレロのリズムが次第に盛り上がり、最後はカーニバルの大騒ぎとなって、熱狂のうちに曲が閉じられます。近代管弦楽法の父、ベルリオーズの面目躍如たる作品といっていいでしょう。

(ヴィオラ 鈴木 克巳)

楽器編成 フルート 2(ピッコロ持ち替え1)、オーボエ 2(コールアングレ持ち替え1)、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、コルネット 2、トロンボーン 3、ティンパニ 1、シンバル 1、トライアングル 1、タンバリン 2、弦楽5部。

 

 


 

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/