*ラヴェル クープランの墓 (2018年2月4日 第40回定期演奏会プログラムより)

 この作品は、フランスの作曲家ラヴェル(1875−1937)が自身のピアノ組曲から抜粋して小編成の管弦楽用に編曲した組曲である。原曲はラヴェルが第一次世界大戦に従軍中の1914年から1917年にかけて作曲した6曲から成るピアノ曲で、1919年にそこから4曲を選んで管弦楽曲とした。「管弦楽の魔術師」と言われたラヴェルは、ほかにも数多くのピアノ曲を管弦楽に仕立てている。
 原曲は第一次世界大戦で戦死したラヴェルの友人にそれぞれ捧げられているが、悲しみを盛り込んで作曲されたというよりは、17〜18世紀フランス音楽の様式を念頭に置いてそれらを借用しつつ、オリジナリティを加えた古典主義的な作品という色合いが強い。日本語で「墓」と訳されるタイトルの「tombeau」は、「失われたものへの追悼」という意味合いで用いられており、「クープランただひとりに、というより18世紀のフランス音楽に捧げたオマージュである」とラヴェル自身が述べている。
 全体を通して明確な旋律を持ち、簡素で明るい雰囲気を有しているが、斬新な和声を身にまとうことで、極度に洗練された雰囲気を醸し出し、真にラヴェルらしい作品のひとつとも言える。戦争と母の死という、彼の人生で最も感情的に大きな出来事によって生まれた心の深淵を、古典的な舞曲という形式に落とし込んだことにより、作品全体が淡く優しい光を帯びているようにも感じられる。
第1曲 前奏曲
 全曲を通じて16分音符の無窮動の音形が、水が流れるように絶え間なく奏される。色鮮やかなオーケストレーションにより、音の噴水が溢れ出てくるかのようだ。
第2曲 フォルラーヌ
 フォルラーヌは北イタリア起源の舞曲で、17世紀のフランス宮廷音楽によく用いられていた。古典的な舞踏形式に基づいているものの、とらえどころのない独特の旋律と、凝った複雑な和声が極めて現代的に響く。
第3曲 メヌエット
 均整の取れた形式を内省的で懐古的な響きで包み込んだ、ラヴェルのメヌエット作品の中でも最高傑作とも評される作品。研ぎ澄まされた繊細な音符が深い悲しみをたたえているかのようである。
第4曲 リゴドン
 南仏の民族舞踊に由来する舞曲。力強く生き生きとしたリズムを持つ前半部に続き、中間部では牧歌的な雰囲気を持つ旋律が木管楽器によって奏される。

(オーボエ 吉岡 克英)

楽器編成 フルート 2(ピッコロ持ち換え1)、オーボエ 2(コールアングレ持ち替え1)、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 2、トランペット 1、ハープ 1、弦楽5部。

 

 


 

このサイトはフレームで構成されております。画面左端にメニューが表示されない場合は、下記リンクよりTopページへお越しください。
ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/